自転車世界旅vol:4【イタリア~スイス編】
第四弾はイタリア、スイス編!
今回はアルプス山脈傍らに、日々着々と歩みを進めていく溝口さんに感動です!
9月7日 フランス イゾラ→イタリアトリノ 【本日の走行距離:132km】
お世話になったおじいさんに別れを告げて、フランスとイタリアの国境である標高2400mのコル・ド・ラ・ロンバルドを越えれば、トリノまで下り基調の平坦が続く。
一週間ほど山を登っては下ってを繰り返していたので、とうもろこし畑の真ん中を貫く一本道はとても気持ちがよく走れた。
9月8日 イタリアトリノ→アオスタ 【本日の走行距離:162km】
平坦に安堵しているのも束の間、目の前にアルプス山脈が迫ってくる。
やっとのことでキャンプ場のバーに辿り着くと、何やら陽気なおじさんが話しかけてくる。
彼の名はシモンさんで、趣味でオペラを歌っているといい何かある度に突然大声で歌いだす。
私に酒を飲ませると、何か歌えと無茶ぶりされ、Maroon5を熱唱させられました(笑)
それはそれは大ウケで、バー内から謎の拍手が送られました。「日本人はもっとシャイだと思っていた」などと言われたが、私だって素面だったら絶対にできないだろう。
9月9日 イタリア アオスタ→スイス シオン【本日の走行距離:120km】
今日から4日間かけて、アルプス山脈を3度登る予定だ。
1日目はイタリアとスイスの国境、アルプス山脈を越えるのは標高2500mのコッレ・ディ・グラン・サン・ベルナルドだ。
35kmの長い登りは本当に辛く、楽しいものだった。
汗を垂らしながら登っていると「こんにちは」と聞き覚えのある言葉が聞こえた。
ヨウスケさんはヨーロッパを旅して、初めて出会う日本人だった。
ドイツの友人たちとポルシェでドライブしているそうだ。
走っているとたくさんのポルシェから応援を頂き、窓から差し入れも頂いた。
ポルシェのサポートカーのおかげで、無事にアルプス山脈を越えてスイスに入ることができた。
9月10日 スイス シオン→ツェルマット【本日の走行距離:92km】
マッターホルンといえば、世界で最も有名な山の一つであろう。
その山の見えるスイスの観光地ツェルマットを目指す。
昨日登ってきたアルプス山脈を今度は逆から登り返すが、だんだんと雲が立ち込めてきて、マッターホルンは見えなかった。
それを見ずには帰れまいと、明日には見えることを期待してキャンプした。
ツェルマットでは有名な観光地なだけあり多くの日本人と出会った。
日本から遠く離れた地で日本語で応援されることが嬉しかった。
9月11日 スイス ツェルマット→ブリグ【本日の走行距離:87km】
早朝日の出前、テントから顔を出すと晴れ渡った空に屹立した鮮明なマッターホルンがあった。
私は興奮ぎみにテントを飛び出して徐々に朝日を浴びて輝くその名峰に感動を覚えた。
当初の予定では、そこで引き返すはずだったが、あまりの美しさに気が付いたら自転車でマッターホルンめがけて登りだしていた。
登山道は舗装されておらず、MTBレースのSDA王滝のような道が続く。
私のBRUNOはオフロード仕様ではないので、通りすがる人の応援され苦戦しながら登っていた。
また、ツェルマット周辺にはMTB用トレイルが整備されている。途中で出会ったMTBライダーと一緒にトレイルを走っては、タイヤの細い私は転んでそれを笑いあっていた。
9月12日スイス ブリグ→ イタリア バヴェーノ【本日の走行距離:107km】
アルプス山脈もこれで登るのは最後なので切なく噛み締めて標高2000mのSimplon Passを越えてイタリアに戻ってきた。
走っていると一人のロードバイクのおじさんと一緒になった。
彼は時速35kmで走行し、歯を食い縛って必死で着いていった。
しばらくしてやっと止まったかと思うと、自転車を乗り捨て、おもむろに岩場から海パンを取り出して湖に飛び込んだ。その行動は既に私の理解の範疇を越えていたが、好奇心で私もジャージのまま湖へとダイブした。
そんな彼はエミリオというおじさんだ。63歳にしてそのアクティブさは尊敬に値する。
ピザをご馳走になり、月夜の下で一緒にカヌーを漕ぎ、酒を交わしながらベッドの上で一緒にサッカーを観戦していたはずだが、記憶は途切れ気が付いたら朝だった。
9月13日 イタリア バヴェーノ→モンツァ【本日の走行距離:155km】
朝はエミリオおじさんと一緒にサイクリングに出かけた。
彼の服を着させてもらい、イタリアンスタイルでマッジョレー湖を横目に話ながら自転車を転がす。
カフェに寄って、景色の良い場所に案内され、湖を前にベンチに座っていた。
私が自転車でウィリーを披露すると「ブラボー!」と大変ご機嫌だった。
一緒に自転車で走っているといろんな事が分かる。
その人の性格や思考が走りに出てくるからだ。今回の出会いはそんな自転車の良さが生んでくれたものだとつくづく思う。
これから今回の旅行で最難関と思われるステルヴィオ峠へと向かう。そこは標高2800m弱の険しい峠だ。
負けるもんか、と意気込みペダルを回していく。